20230115

舞台「リコリス・リコイル」(1/15 12:00@天王洲銀河劇場

22年夏クールで最もハマったアニメである『リコリス・リコイル』の舞台版。日本の治安を秘密裏に守る「リコリス」錦木千束と井ノ上たきなの出会いから、平和を脅かす存在である真島との対決までのストーリーを再構成してある。

錦木千束が河内美里さんと知り勝利を確信。去年の舞台版『やがて君になる』では小糸侑を演じた河内さんも観ており、作品に対する解釈やキャラクターの演じ方に信頼を寄せていた。

観劇した感想としては、やはり河内さんが素晴らしく良かった。舞台上で常に動きまわり表情をころころと変える様はまさに錦木千束そのもの。他のキャストもアニメに寄せていて全体的にクオリティが高く、クルミはもはや本人がそこにいた。舞台ということもありアニメよりも感情表現が大仰で、真島は結構印象が違った。

全編通じてオタクの観たいシーンてんこ盛りだった。千束がたきなを持ち上げてくるくる回るシーン、女の子同士でも再現できるんだ……。他にも私服衣装とかばのり衣装の再現がありテンションが上がった。めっちゃかわいかった。あと自動車の舞台装置が人力すぎてじわじわきた(劇中でもネタにされていた)。

舞台「ウマ娘 プリティーダービー」~Sprinters’ Story~(1/15 18:00@品川ステラボール

アプリゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』の初の舞台化作品。舞台化発表時点では(ウマ娘の舞台化??)という不安が拭えなかったが、演出が児玉明子さんと知り勝利を確信(2回目)。さらにキャストに佐藤日向さんと磯部花凛さんが起用されており、舞台向きな人選ということで当初よりも期待値が上がっていた。

観劇してみると挑戦的な試みが多く大変興味深かった。レースシーンの描写では、タップダンスを組み込んで競走馬らしい迫力満点の足音を再現。GⅠレース後にはウイニングライブがあり、ライブ中のみペンライトの使用が許可され、ゲームの振り付けを採用しキャストが歌って踊る。このウイニングライブの実在性がとても高く、自分がウマ娘世界に生きているような感覚になった。実況役と解説役の方が第4の壁を越えて客席にノリ方を誘導してくれる点もおもしろい使い方だった。初日の観劇だったので客側もまだ盛り上がり方のコツを掴めていない感じがあったが、公演を重ねるにつれてどんどん洗練されていくと思う。

物語の中心となるのはダイタクヘリオスダイイチルビーケイエスミラクルヤマニンゼファーの4名。彼女たちは'90年から'92年頃の短距離路線で活躍した名馬の魂を背負うウマ娘だ。内容としてはヘリオスとルビーの関係を描きつつも、ミラクルの脚部不安と彼女を支える3名の交流にも重点が置かれていた。史実上では、ミラクルはレース中に故障してしまい最後まで走りきることができなかった。舞台においてもミラクルは脚部に異変を感じとり恐怖に襲われる。しかしヘリオス、ルビー、ゼファーの想いを受け取ることで、ミラクルは脚部故障からの復帰を叶える。ミラクル役の佐藤さんの演技が大変に素晴らしく、追い詰められ絶望に打ちひしがれてから希望を見出すまでの感情の変化が痛いほど伝わってきた。一方で大団円のウイニングライブではめちゃくちゃ笑顔でファンサするのでこちらが狂いそうになった。

ウマ娘の神髄とは、夢半ばで先立ってしまった名馬たちに夢の続きを見せることができること。今回の舞台ではウマ娘が本来持っている意義を改めて描くことで、舞台化作品として高いクオリティで成立していると思う。